小型フリーズドライ装置なのに全自動の汎用機登場! さて、仕込みから仕上がりまでボタン一つの全自動って、どこまでやってくれるんでしょうか?
最近はコンピューター制御の真空凍結乾燥機(フリーズドライ装置)が出てきました。ところで、そんなに簡単に誰でもフリーズドライができるのでしょうか?
バイオ系研究や創薬に使用する凍結乾燥機は、もととなる生理活性を壊さないように、あとで水などを加えると元どおりの活性を示すものの開発が多く見られます。通常の乾燥は加温しますが、熱をかけずに氷のまま乾燥させるのがフリーズドライです。バイオ関係では「真空凍結乾燥」といわれることが多く、食品では「フリーズドライ」と呼ばれることが多い印象です。
フリーズドライでは氷がそのまま消えていく「氷の昇華」がおきますが、この時も試料から熱が奪われます。手を水で濡らして息を吹きかけると体温が奪われて涼しく感じます。同様に、氷が消化する時も試料から熱を奪って乾燥していきます。真空中での乾燥では、試料は魔法瓶の中にいるのと同じで、周辺から熱がうまく伝わってきません(輻射熱のみ周りから供給されます)。したがって乾燥していくにしたがって試料温度は徐々に下がっていきます。そうなると、氷が消化しにくくなる、すなわち、乾燥に時間がかかります。そこで通常、食品用のフリーズドライ装置では、試料の温度が下がりすぎて乾燥が遅くならないように、試料が載っている棚の温度を氷が溶けない程度に調整します。放っておくと−30℃まで下がって乾燥が遅くなるところを、棚に仕掛けたヒータで加温し、棚温度を例えば−10℃程になるように熱を供給してあげます。そうすることによって乾燥を早めることができます。
乾燥がある程度進むと、試料の表面は乾燥しますが、中心には氷が残っています。周りは乾燥したスポンジで包まれた氷のような状況。このような試料の中心までは熱が届きにくいので、20℃、30℃と棚温度をあげていき、中心の氷も昇華させていきます。
食品乾燥にも使用される凍結乾燥機には、棚温度をトレースする温度センサーと、試料に差し込んで使うプローブがあります。試料内部まで乾燥すると、氷点下の温度から棚温度に近い温度に上がっていきます。そうすると乾燥が完了します。その後も熱を加えて完全な乾燥を行う手法もありますが、これは別の機会にお話しします。
このように、棚の温度は乾燥が進むにつれて温度を徐々に上げていくことが望まれますが、これまでは手動で棚温度を調整していました。最近は棚温度の調整を事前にセットしたプログラムにしたがって、全自動で乾燥してくれる凍結乾燥機もお目見えしています。これまでは業務用の真空凍結乾燥機のみで見られた高機能も、手が届くところまでやってきたという感じです。
最近はフリーズドライがテレビ番組で紹介されたりして、形が悪かったり、旬をまたいでの作物の出荷など、農家さんも利用も増えているようです。海の幸を乾燥させて軽くすると、海外までの送料が安価になるし、腐らないし、室温保存可能ということで、海外に多くの日本製シーフードも輸出されようとしています。
操作がしやすくなった全自動真空凍結乾燥機。あなたはどんなものを作って売りますか?