装置の減価償却やスループット、ランニングコストを考えると、1日で乾燥を完了させて毎日1クールで回したいところですね。しかし、乾燥時間1日というのは誰が決めたのでしょうか?真空ポンプで吸えば吸うほど、トラップ温度を低くすればするほどに乾燥は早められると考えることには無理があります。冷却トラップの温度が低いと、それだけ真空チャンバー内の水分の蒸気圧を低くできるので、乾燥は確かに早くなります。しかし、いくら真空中に水分子を少なくひて昇華を促進したとしても限度があります。真空中に水分子がたくさんあると、それらは衝突し合うので、サンプルからも水分子が飛びにくくなることは確かです。しかし、トラップ温度を−60℃から−80℃にしたところで、消費電力量は倍近くにもなりますし、エネルギー効率は悪くなります。トラップ温度は−40℃あれば十分で、ここにこだわって、より低い温度にする必要性はそれほどないのかなと思います。
しかしながら、加温することが困難なワクチンやバイオマテリアルなどは、乾燥を早めるためにはトラップ温度を少しでも低くして乾燥を加速するしかないので、製薬系の真空凍結乾燥機の冷却トラップ温度は低くしたものが販売されています。トラップ温度が低いとトラップをすり抜けてポンプに引き込まれる水分子も少なくなるので、真空ポンプのオイルは汚れにくくはなります。食品用にはトラップ温度が低いものでなくても十分に乾燥ができます。トラップ温度が低いと、エネルギー効率は低くなるのが一般的かと思います。生産に対する環境負荷は大きくなると言えるでしょう。
フリーズドライの乾燥完了を判断する指標は、また別の機会に述べたいと思います。