ジュースの搾りかすなどで柑橘系お皮は大量に廃棄されますが、ここにはまだ有効利用できる香り成分が残っています。特に皮の表面に含まれるリモネンなどの成分は香りがよく、芳香剤にも利用されています。しかしながらこの精油成分は沸点が低く、常温でも揮発する成分。これをフリーズドライすると、減圧下での乾燥なので、多くの精油が飛んでいってしまいます。とはいうものの、実際に低温域まで(20〜30℃)を上限として真空凍結乾燥すると、できた乾燥品には香りは残っています。これを十分とするか否かは何を目的にするかによっても違いますが、実際に柑橘系の皮をフリーズドライにして販売されていらっしゃる方は多くいらっしゃいます。
フリーズドライにはできるという前提でお話ししますが、そこで問題となるのは真空ポンプです。真空ポンプにはオイルを使用するオイル回転式真空ポンプと、オイルを使用しないオイルレス真空ポンプがあります。オイルを使用する真空ポンプの場合、乾燥対象試料に含まれる精油成分が真空ポンプ内のオイルに溶け込み、到達真空度を下げてしまいます。真空ポンプ内の専用オイルはとても沸点高く、当然ですが真空にしても沸騰したり揮発しにくい高精製オイルです。ここに沸点が低い精油が溶け込むと真空度が高まらなくなります。そうなると真空ポンプオイルを交換しなくてはなりません。この溶け込んだ精油は、真空ポンプを使用し続けると徐々に排出され、真空能力が元に戻ることがあります。
しかしながら、通常では5回ほど凍結乾燥を行った後に交換していた真空ポンプオイルの交換頻度がこれ以上高くなるのは結構面倒です。従って、柑橘系の乾燥を計画されている方はオイルレス真空ポンプの使用を強くお勧めします。そうでないと、装置を購入した後に問題を抱えてしまいます。予算的に難しいとしても、購入した新品の機械で満足いかなければ、後でどのような気持ちになるでしょうか。ということで、購入時には慎重に真空ポンプを選択されることをお勧めします。
柑橘系の皮の凍結乾燥にオイル回転式真空ポンプを利用すると、通常は凍結乾燥中に20Pa(パスカル)以下になってくれる真空度が100Pa以上になりっぱなしで、なかなか乾燥してくれないケースが発生します。せっかく新しい装置を導入したのにうまく働かないほど悲しいことはありません。是非、フリーズドライ装置の導入を検討される折には、慎重に真空ポンプを選択してください。( ˊ̱˂˃ˋ̱ )