日本の優れた果物は、なぜ世界で正しく評価されにくいのか
― 農業技術と輸出戦略の話 ―
日本では、毎年のように驚くほど美味しい新品種の果物が開発されています。
香り、糖度、食感、見た目。そのどれを取っても、世界最高水準と言っていいものが少なくありません。
しかし現実を見ると、その多くが日本国内で消費されるだけで終わってしまっています。
理由は単純ではありませんが、ひとつ大きな問題があります。
日本は「守る」ことに力を使いすぎている
日本の農家さんや行政は、優れた品種を守ろうとします。
それ自体は当然で、間違いではありません。
ただ、その間に——
苗やノウハウが海外に持ち出され、
海外で大規模に栽培され、
世界市場に流通していく。
そんなケースが実際に起きています。
結果としてどうなるか。
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海外では「日本由来」の果物が普通に流通
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日本産は価格競争で不利
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本家であるはずの日本が、世界市場で主導権を失う
これは果物に限った話ではありません。
半導体、材料技術、最近ではペロブスカイト太陽電池も同じ構造です。
技術はあるのに、ビジネスを先に考えない。
これは日本人が繰り返してきた弱点だと思います。
新鮮な果物は、そのままでは海外に売りにくい
果物の海外輸出を考えると、すぐに壁にぶつかります。
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生鮮品は日持ちしない
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輸送時間で熟成が進む
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冷凍するとコストが跳ね上がる
たとえばイチゴ。
日本の市場に出ている「食べ頃」のイチゴは、
海外輸送を考えるとすでに遅すぎる場合が多い。
収穫後に熟成が進み、
現地に届く頃には香りも食感も変わってしまいます。
さらに言えば、
「完熟イチゴ」と「収穫後に熟したイチゴ」では、
香りそのものがまったく違います。
完熟品を安定して海外に届けるのは、
日本国内ですら簡単ではありません。
そこで考えるべき、もう一つの選択肢
ここで、少し視点を変えてみます。
生で売れない=価値がない
という考え方自体を、見直す必要があるのではないでしょうか。
たとえば、
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冷凍
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加工
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乾燥
その中でも、
**フリーズドライ(真空凍結乾燥)**という方法があります。
フリーズドライであれば、
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品種特有の香りを残しやすい
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常温輸送が可能
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軽量で輸送コストが低い
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品種名を付けて世界に出せる
もちろん、生の完熟果実の代わりにはなりません。
それでも、
「この品種は、こういう香りと味を持っている」
というメッセージを世界に届ける手段にはなります。
フリーズドライは「代替品」ではなく「戦略ツール」
重要なのは、
フリーズドライ品を「妥協の産物」と考えないことです。
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品種のPR
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ブランドの確立
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海外市場での認知
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将来の生鮮輸出への布石
こうした目的のための戦略的な手段として使う。
そう考えると、
フリーズドライは単なる加工技術ではなく、
日本農業の輸出戦略を支えるツールになり得ます。
技術は、使い方次第で価値が決まる
日本には、
優れた品種も、優れた技術も、優れた人材もあります。
足りないのは、「国内で売る前に、海外でどう売るかを考える視点」だと私は思います。
フリーズドライ装置や真空凍結乾燥機は、
その課題を解決するための一つの現実的な選択肢です。
日本の果物が、
日本発のまま、世界で正当に評価されるために。
技術を「守る」だけでなく、
先に使い、先に広げる。
そんな発想が、今こそ必要なのではないでしょうか
フリーズドライ装置や真空凍結乾燥機を使った具体的な方法については、
こちらで技術的に整理されています