試料温度(棚温度)を50℃にしてダラダラと出てくる水蒸気は何者?

糖質が多い果物などをフリーズドライ(真空凍結乾燥)するとき、乾燥産物はカリッとしてほしいですよね。そのため、糖分が多い食材は乾燥の最終段階で温度を上げる必要性が出てきます。最後に温度を上げる仕上げを行わないと、なんとなく乾燥感が足りない場合があります。これはなぜでしょうか?

乾燥を丸1日で仕上げたいとなると、どうしても棚温度を上げたくなります。また、上げないと乾燥は遅くなります。こうした場合、温度上昇に乾燥がついていけず、一部で氷が溶けて沸騰したような状態になることがあります。サンプル中の氷が一部溶けると、糖分が飴状になっていきます。温度を上げずに数日かけて乾燥すると、そうはならないのですが、やはり乾燥時間は早めたくなるのが人情です。温度を急に上げると、試料の一部が飴状になり、風船のように膨らんで、ぷくぷくと沸騰の状態になることがあります。この飴状態になるとなかなか乾燥がうまくいきません。飴は時間とともに少しずつは固くなっていきますが、飴の乾燥には時間がかかります。そのため、野菜などでは乾燥が完了したらチャンバー内の気圧は十分に下がってくれますが、この飴が発生すると、水が抜けるのに時間がかかるため、圧力は少し高いままで推移します。棚温度を急激に上げてしまうと、余計に乾燥が進みません。

糖分は水分子ととても親和性が高く、なかなか水分子を手放してくれません。逆に、近くに水分子があると引き込んでしまうくらいです。店で販売されている飴を空気中に放置していると、ベトベトになる事を経験したことがないでしょうか。あれは飴が水分を吸い寄せているからです。糖分と水分の親和性は、温度を上げてやることによって弱くなります。それ故、フリーズドライ乾燥で糖分が多い果物を乾燥させる場合には、水分を飛ばしやすくするために棚(乾燥対象試料)の温度を上げて、乾燥を加速させます。しかし、水と糖分は仲がいいため、温度を上げてもじわりじわりとしか水分子を手放してくれません。したがって、糖分が多い試料では、その温度を上げてもジワリジワリと水分が出ていきません。そこで、だいたい乾燥したところでフリーズドライは完成したと妥協します。これを袋詰して乾燥剤を入れれば、特に乾燥が悪いところもわからなくなっていきます。

糖分が多い食品やフルーツは、結構、乾燥が厄介です。乾燥前には−40℃くらいまで冷やさないと、乾燥初期で沸騰が起き、なかなかシャンバー内の真空度が下がってくれない場合があります。あま〜いフルーツは超低温で冷凍してフリーズドライ装置にかけましょう。

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