アルコールが含有されているだけで凍結乾燥はできませんと言われるのが一般的です。その理由は、通常の凍結温度で凍結しないからです。シャーベットではダメだからです。
そのまま凍結乾燥機にかけたらどうなるの?
それは真空にすると、シャーベット状態の一見固まっているように見えるものから、ぶくぶくと泡が出ます。アルコールが真空中で沸騰している状態です。
そこで疑問が。それじゃあ、そのまま凍結乾燥を続けたらどうなるの?
アルコールは、フリーズドライ装置(凍結乾燥機)の水分を補足するコールドトラップと呼ばれる冷却部分に氷となってとどまらず、そのまま気体となったアルコールガスが真空ポンプへと流れていきます。使用している真空ポンプが「オイル回転式真空ポンプ」ですと、ポンプの潤滑油にアルコールが溶けていき、高い真空を形成できなくなります。そのために真空度が下がり、昇華で飛んで行くべき水は氷の状態を保てずに溶けます。これ自体は乾燥対象物の温度コントロールでなんとかなるとしても、真空ポンプが本来の機能を発揮できなくなります。次回使うためにもオイル交換も必要となります。
その打開策として、オイルを使わない真空ポンプの利用があります。アルコール自体が冷却トラップで捕捉されずに真空ポンプの方にいくので、真空ポンプはこの気化したアルコールガスをせっせと排気しつつ、高い真空度も保たないといけないので、排気容量が大きめの真空ポンプが必要となります。
真空ポンプはいいとしても、試料は真空中で、アルコールが飛んでしまうまではブクブクと泡が出ます。庫内が汚れるので、試料の投入方法に少々工夫が必要かもしれません。
棚温度が調整できる凍結乾燥機では、棚の温度を調整することで、真空度があまり下がらないように温度調整すればよいと思います。
「アルコールを含むものは凍結乾燥できない」と一般的にいわれますが、数%くらいならシャーベット状に凍結して、何とかなるというのは私の考えです。氷が溶けた状態で真空中で乾燥させる方法は単なる「減圧乾燥」です。凍結乾燥機やフリーズドライ装置で検索すると、減圧乾燥機まで出てきて、これが安いものだから間違って購入する方がいらっしゃいます。食品を凍結して乾燥する凍結乾燥機は、少なくとも100万〜数百万円します。棚の温度調整ができない研究用の安価な凍結乾燥機を用いて食品を乾燥すると4〜5日かかります。食品用の凍結乾燥機は、棚の温度をコントロールできるところが違います。研究用よりも食品用の真空凍結乾燥機(フリーズドライ装置)の方が高機能といっても良いと思います。