電気代なんて関係ない。とにかく早く乾燥したい。そのような希望に沿う事ができる機種は、コールドトラップ温度がなるべく低く、コールドトラップは試料乾燥室になるべく近いものがベターです。
試料乾燥室とコールドトラップ(氷を蓄積する部屋の部分)の両者はなるべく近くに配置する
構造、すなわち、試料室と同じ空間に冷却部分がある装置が乾燥効率が高いです。試料を載せる棚は温度を上げて乾燥させていくため、ここからの輻射熱がコールドトラップの冷却部に行かない構造が望まれます。真空中なので輻射熱の遮蔽だけ考えればよいので、棚部分と冷却部分に輻射熱を遮断する金属遮蔽板が一枚あれば大丈夫です。
中規模の装置では試料室とコールドトラップが別々になっていて、パイプで繋がっているものがあります。このタイプは少し乾燥効率が落ちます。しかし、試料室とコールドトラップを同室に設置することが物理的部困難な場合も多く、その場合にはこの両者をパイプで繋ぎます。研究所などでよく使用される真空凍結乾燥機には、フラスコを装置に差し込んで乾燥させるものがあります。これは本当に乾燥に時間がかかります。どちらかというと、食品を乾燥する装置の方が研究用よりもハイスペックです。ここまでは、試料室とコールドトラップの位置と乾燥時間の関係のお話しでした。次に、コールドトラップ温度について述べます。
コールドトラップは温度が低いほど試料の乾燥時間が早くなります。これは、試料室の飽和水蒸気圧がより低くなるために乾燥が早くなります。それなら、食品乾燥にはなるべくコールドトラップ温度が低いものを選びたくなるのがあたりまえ。ここに落とし穴があります。コールドトラップを冷やすには冷媒を使用しますが、ー40℃くらいまでは1台のコンプレッサーと1種類の冷媒でこの温度に到達できます。しかしながら、ー60℃やー80℃となると、沸点が異なる2種類の冷媒を、2機の冷凍機を使用して2段にしてこの温度に到達させます。そこで電気代の問題です。冷凍機を2段にした場合、1段のものに比較し、消費電力は2倍で済まないのです💦 冷凍機は1段目で−30℃くらいまで冷やし、その冷却を利用して2段目のコンプレッサーでー70℃からー80℃を獲得します。大規模な真空凍結乾燥機では2段にすることは少ないですが、冷却部分は試料室に近接して配置するため、効率よく乾燥します。問題は中規模の装置(20Lから50Lのトラップ容量)。この辺りの装置の多くは冷凍機2段式で、尚且つコールドトラップが独立して設けられ、試料室とはパイプで連結されたものが多いです。フリーズドライは結構な電力を消費しますので、電気代が乾燥商品の価格に大きく響いてきます。
ということで、環境にやさしいい、すなわち電気代が安く済むフリーズドライ装置(真空凍結乾燥機)は、1段の冷凍機の装置となります。電気代が倍でも、半分の時間で乾燥できたら良いのですが、そう簡単には水分は乾燥対象試料から昇華してはくれません。
少しでも参考になりましたら幸いです。